変わり種?ユニークなカップ&ソーサー4選
横山美術館では、2022年1月10日(月・祝)まで、企画展「優美な曲線から歴史が伝わる カップ&ソーサー物語」を開催しています。
本展覧会では明治時代以降、日本で作られ海外へ輸出されたカップ&ソーサーを約145点展示しています。
今回は展示中の作品から、人物がたくさん絵付けされたユニークなカップ&ソーサーやティーセットを紹介します。かなり変わり種かもしれません。
1.上絵金彩人物図ティーセット
白山、明治時代
ギャラリートークなどでお客様をご案内していると、このティーセットに驚かれる方が多いです。
羅漢と思しき人物を描き、惜しげもなく金彩を施しています。ポットの注ぎ口やカップのハンドルは、龍の顔や尻尾を模しており、ポットの蓋のつまみから胴部にかけて、龍の身体がつながるように形作られています。このような作風の輸出用ティーセットは本作のみならず、他にも作例が見られました。
2.上絵金彩羅漢図ポット、シュガーポット、トレイ、調味料セット
北川喜作、明治時代中期~後期
細部を見るには2枚目の写真が分かりやすいと思います。1の作品以上に人物がびっしりと絵付けされたセット。もはや少し離れて見たら人物が描かれているとは思えないかもしれません。こちらも僧侶と思しき人物が描かれています。トレーには書物や掛け軸の描写も。
作者の北川喜作は横浜で活躍しました。明治20年代、多くの陶磁器商が横浜に登場しましたが、北川もその一つでした。
3.上絵金彩人物図カップ&ソーサー
上木屋辻長右衛門、明治時代中期~後期
高い高台が特徴的なカップ&ソーサー。ハンドルの形にも工夫を凝らしています。僧侶たちは顔を左右に向け、お互い話をしているようにも見えます。がやがやした様子がうかがえるようです。
裏側の銘には上木堂とありますが、これは『横浜貿易捷径』(横浜で貿易に従事する会社のリスト)に記載されている、黄金町2丁目の上木屋辻長右衛門だと推測されます。辻長右衛門は売込商と絵付け業、双方に携わっていたと伝わっています。
4.上絵金彩百老図ティーセット
志水禄之助商店、大正時代~昭和時代前期
一見、エキゾチックな色合いのティーセットのように見えますが、
実は全体に人物の丸い顔がたくさん並んでいます。恐らくこれはゴム印などで押して絵付けをしたのではないでしょうか。ちなみに写真だとわかりにくいですが、人物の色は金色です。
ちなみにカップ内側は押すのが大変なのか、やや顔の形が崩れているようにも…この作品にかかわらず、カップ内側の絵付は難易度の高いものと思われます。
制作者の志水禄之助商店は、明治20年代前半から半ばにかけて名古屋で活躍していた絵付工場。
志水禄之助は西瓦町に屋敷を有した士族。絵画に関心を持っていたことから、明治15,6年(1882-83)頃、名古屋の滝藤商店に入りましたが、明治25~30年(1892-97)に西瓦町に店を出し独立しました。
カップ&ソーサーはどれも大きな作品ではないので、よく見ないと緻密な人物描写を見逃してしまうかもしれません。
美術館内で実際に目にすることがありましたら、ぜひじっくり目を凝らして見てみてください。
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