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「近代・現代 陶磁の技巧絶美」開催中~4/13(日)

日本の洋画界が激変を迎えた時代、陶磁器の画工でありながら画壇でも活躍する職人たちがいた――。
明治から昭和、そして現在まで、製陶会社において連綿と引き継がれる、陶磁器に見る技巧と芸術美の世界。


横山美術館では、2025年4月13日(日)まで、企画展「近代・現代 陶磁の技巧絶美」を開催しています。



【企画展案内】

チラシPDFはこちら

 明治から昭和にかけ、名古屋市東区付近は多くの絵付け工場や貿易業者が軒を連ねる日本最大の集積地として輸出陶磁器産業繁栄の起点となりました。
 明治42年には日本陶器合名会社内に「技芸科」が設置され、絵画科・彫刻科を備えた履修体制はある種、社内美術学校の先駆けとなっていきます。当初の「(食器づくりのための)従業員の技芸の進歩」という指導方針は、次第に「絵画・彫刻に関する技術と教養の育成」へとその範囲を広げ、技芸科生による作品展や図案展が毎年開催されるようになりました。そうした環境の中から、市ノ木慶治のような中部画壇でも活躍する職工も現れます。
 本展では、明治から昭和、そして現在も製陶会社で連綿と引き継がれる絵画・彫刻技術の精華を一堂にご覧いただきます。


【見どころ・展示作品紹介】

▽ 市ノ木慶治画

日本陶器/市ノ木慶治画《上絵薔薇図花瓶》昭和10~15年頃

■ 伝説の画工・市ノ木慶治
市ノ木慶治(1891-1969)は、森村組(日本陶器)を代表する陶磁器絵付師で、文展・日展などの画壇でも活躍しました。
絵付けした製品に個人の名前を書き込むことが許された初めての画工といわれ、皇太后行啓では画工代表として腕前を披露しています。
薔薇の絵付に定評があり、「薔薇の市ノ木」とも呼ばれました。

日本陶器/市ノ木慶治画《上絵果物図飾皿》明治45~昭和15年頃

▲ 写実的な質感で描かれた張りのある艷やかな葡萄や、うぶ毛の生えた柔らかい桃。それらを暗色の背景に置き光を当てることで、瑞々しさを一層際立たせています。右下には市ノ木慶治のサイン「K.Shinoki」があります。


▽ 日本陶器技芸科

日本陶器/中島音次郎画《上絵花蝶果物図花瓶》昭和時代中期~後期

■ 絵画科・彫刻科からなる「技芸科」
日本陶器は職工の社内教育に力を入れ、明治42年に普通科と技芸科を創設しました。当初の技芸科は「(食器づくりのための)従業員の技芸の進歩」という指導方針でしたが、次第に「絵画・彫刻に関する技術と教養の育成」へとその範囲を広げていくこととなります。
社内美術学校の先駆け的存在であり、画壇で認められる画家も輩出しています。

日本陶器/太田龍一画《上絵鯉図花瓶》昭和10~15年頃

▲ 日本画家としても活躍した太田龍一は鯉の絵を得意とし、日本画の題材としても用いています。技芸科・日本画部の委員を務め、戦後は三郷陶器でも活躍しました。


▽ 日本陶器意匠部

日本陶器/木村義一画《上絵静物図皿》昭和8年以降

■ 社内のデザイナー組織
意匠課・造形課・見本課・構図課などで構成され、戦後には意匠部長・武間之男を中心としてデザイナー組織の土台が形成されていきます。部内にはデザイン研究会も設置されていました。

日本陶器/寺埜修三デザイン画《ゴルフ図皿》昭和30年以降

▲ 上の作品は意匠部室長であり技芸科の主任も務めた木村義一の画、下の作品は意匠課に所属していた寺埜修三のデザインによるものです。このゴルフのシリーズは6種類確認できます。


▽ フィギュアリン

日本陶器《オーロラ》フィギュアリン/昭和51年以降

■ 磁器製の立体彫像
陶彫あるいはフィギュリン、フィギュアとも。日本陶器では、高度な技能と優れたデザイン感覚でつくられたハンドメイドの美術工芸品「スタジオコレクション」を始め、人物や動物などのフィギュアリンをつくっています。

日本陶器《群鷲》フィギュアリン/昭和51年以降

▲ 「スタジオコレクション」の銘があるフィギュアリン。翼を広げた6羽の鷲が、上下に重なるように配置されています。高い技術を必要とする複雑な造形で、細部にも繊細な表現が見られます。


▽ その他メーカー

■ 名古屋製陶所

名古屋製陶所《上絵薔薇図花瓶》明治44~昭和21年

■ 大倉陶園

大倉陶園《馬置物》大正12年以降

■ 香蘭社

香蘭社《孔雀置物》昭和10年頃

■ 深川製磁

深川製磁《少年と犬置物》昭和時代以降

■ 松風陶器

松風陶器/市ノ木慶治画か《上絵風景図カップ&ソーサー》昭和31~38年

■ 三郷陶器

三郷陶器/木村義一(木村商会)画《上絵帆船図皿》昭和21~28年頃

■ 遠藤陶器

遠藤陶器/市ノ木慶治画《上絵薔薇図皿》昭和30~40年頃


展示点数は全部で約200点
写真撮影・SNS等への投稿もOKです。

製陶会社で築かれてきた職人の技術と、芸術ともいえる美の融合――陶画や陶彫の世界を、ぜひ間近でご覧ください。

★横山美術館公式HPでは、紹介動画もご覧いただけます。


【開催概要】

■企画展名:「近代・現代 陶磁の技巧絶美」
■開 催 日 :2025年1月10日(金)~4月13日(日)
■開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
■休 館 日 :毎週月曜日(祝・休日の場合開館、翌平日休館)
■入 館 料 :一般1,000円(800円)、高・大学生・シニア65歳以上800円(600円)、中学生600円(400円)、小学生以下無料 *( )内は20名以上の団体料金、障がい者手帳をお持ちの方700円


【関連イベント】

■講演会「上絵付技法からみる市ノ木慶治作品の魅力について― 卓越した技から生み出される表現の美に迫る ―」
〈市ノ木の上絵の素晴らしさ〉〈技法について(模写を踏まえて)〉を中心に、新たな考察なども含めお話しいただきます。
 日  時:2025年3月23日(日) 13:30~15:00
 申込方法:1月10日(金)よりお電話メールGoogleフォームにて先着順
 参  加  費:無料(要入館料)
 定  員:20名(要事前申込)
 ※残席僅かです。定員に達した場合はキャンセル待ちとなります。

■ギャラリートーク
学芸員による展示(企画展・常設展)解説を行います。
 日  時:1月18日(土)、2月1日(土)、2月15日(土)、3月1日(土)、3月15日(土)、4月5日(土) 各日13:30~ 1時間程度
 場  所:横山美術館展示室
 ※事前申込不要、要入館料


【パンフレット】

■展覧会パンフレット:横山美術館1階にて販売中(税込200円)

※その他過去の企画展の図録は通販(STORES)でもお求めいただけます。


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横山美術館
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