「幻の陶磁器」とよばれたコラレン
カラフルなグラデーションに、何やらキラキラ光っているトップの写真。
これらはコラレンといい、製作期間が短かったことなどから「幻の陶磁器」とも呼ばれています。
このコラレンをまとまって見られる美術館は、横山美術館以外にほぼない……といっても過言ではないかもしれません。幻の陶磁器と呼ばれるだけあります。
その美しさをじっくり見ていきましょう。
■コラレンについて、5分でさくっと知りたい方はこちらの動画をどうぞ。
※音なしでもご覧いただけます。
コラレンとは
今から100年以上前、主に名古屋で制作されていた陶磁器の技法のひとつで、つくられた花瓶や壺は主にアメリカへ輸出されていました。
白い磁器にマットな感じにカラフルな絵付をし、その上にガラスビーズを貼り付けて焼き上げます。
明治時代後期に突如現れ、その装飾性の美しさから人気を博しました。
このつぶつぶしているのがガラスビーズです。
ガラスビーズを貼り付けているので、光が当たる角度によってキラキラした輝きを放ちます。
コラレンという名前は、英語で「珊瑚のような」を意味する ”Coralene” が由来。ビーズ部分が珊瑚の感触に似ていることから、このように呼ばれたと考えられています。
また、ビーズを貼り付けた周りを金線で縁取るなど、気の遠くなるような非常に手の込んだ技法を施します。
キラキラ光って美しいコラレンですが、ガラスビーズを貼り付けたり、金線で縁取る手間に加え、焼くのも大変でした。
磁器は1,300℃ほどで焼くのに対し、ガラスはこの温度だと溶けてしまい、写真のようなつぶつぶの感じは出せません。熱膨張率の異なる磁器にガラスビーズを貼り付けて焼き上げるので、作陶はとても難しかったといいます。
コラレンは花をアレンジしたデザインが多く、下の画像のような薔薇やポピーなど、アール・ヌーヴォーでよく用いられた花をモチーフにしています。
アール・ヌーヴォーが流行った19世紀末から20世紀初頭にかけての美術は、花や植物などの曲線を活かした作品が数多くありますが、コラレンもそういった影響を受けていたと考えられます。
また、ガラスビーズ部分だけでなく、マットなグラデーションの絵付にもご注目。どれも鮮やかでなかなかハイセンスな色合いです。
製作から100年以上経っても、おしゃれで洗練された雰囲気を感じさせます。
普段の展示では、ガラスビーズがたくさん施された正面をお見せしていますが、絵付のグラデーションについていえば後ろがよく分かります。↓
水色をベースにピンク、オレンジ、黄色のぼかし……とても昔に作られたとは思えないくらい、現代にも通用するセンスだと思いませんか?
製作の難しさや、アール・ヌーヴォーからアール・デコに流行が移り変わったことなどを理由に、登場からわずか10年ほどで姿を消してしまい、「幻の陶磁器」ともいわれるコラレン。
製作された100年前はもちろんのこと、現代を生きる私たちをも魅了する美しさを持っています。
ですが、コラレンの美しさを写真だけでお伝えするのは難しい…!
キラキラ光る様子は、ぜひ冒頭の動画でご覧ください。
※2021年6月22日現在、コラレンは展示しておりません。
参考文献
・井谷善惠『甦る白瑠璃 コラレン 幻のオールド・ノリタケ』平凡社、2007年
・井谷善惠『近代陶磁の至宝 オールドノリタケの歴史と背景』里文出版、2009年
・『横山美術館300選』公益財団法人横山美術館、2017年
横山美術館の概要についてはこちらをご覧ください。