横山美術館の図録の話―2020年〜2021年刊行分―
こんにちは、横山美術館です。
本記事では、2020~21年に当館が刊行した図録4冊についてご紹介します。
※本記事で紹介するものも含め、当館刊行の図録はすべて上記サイトでお買い求めいただけます。
京焼 その技が歴史をつくる
2020年3月に開催した企画展「京焼 その技が歴史をつくる」の関連図録です。
帯山与兵衛「上絵金彩花鳥図花瓶」
青と黄色のグラデーションに目を奪われます
江戸時代の京都では、雅やかな文化と精緻な技に培われた品格ある陶磁器が生まれ、つくり続けられてきました。
しかし、明治維新によって首都機能が東京に移されると、上流階級も東京へ移り、従来の高級陶磁器の購買層を失ってしまいます。そこで六代錦光山宗兵衛や九代帯山与兵衛らが海外市場に目を向け、輸出に活路を見出しました。
明治・大正時代を中心に、伝統を守りながら革新的な陶磁器を生み出そうと研鑽を重ねた京焼122点を紹介。銘一覧も掲載しています。税込500円。
時と美を託す 陶板
2020年7月に開催した企画展「時と美を託す 陶板」の関連図録です。
三代加藤善治、孝山画「上絵婦人図陶板」
一見、日本画のようですが磁器です
瀬戸の三代加藤善治が焼き上げた、薄く歪みのない板状の磁器は、明治28年(1895)の内国勧業博覧会で絶賛されました。
陶板には主に東京や横浜などで精緻な日本画が上絵付けされ、海外へ輸出されました。陶板に焼き付けられた絵画は、退色しにくいうえに絵具の剥落が少なく、紙本や絹本とは異なり素地の変質も生じにくいことから、長年にわたって鑑賞できます。
明治から昭和時代にかけてつくられた、往時と変わらぬ美しさの陶板90点を紹介。銘一覧も掲載しています。税込500円。
目でも陶酔できる ウイスキーボトル
2020年11月に開催した企画展「目でも陶酔できる ウイスキーボトル」の関連図録です。
襟の部分が栓になっているウイスキーボトル
主にアメリカに向けて日本から輸出されていた陶磁器のひとつに、ウイスキーボトルがありました。
これらは、輸出用の陶磁器製の置物「セト・ノベルティ」をつくる技術を応用し、多くが瀬戸で制作されました。細部にまで表現の行き届いた写実的な装飾品としての地位を確立し、どこがボトルの栓なのか分からないほど巧みな造形です。
日本からの陶磁器製ウイスキーボトル輸出の最盛期である1970年代を中心に、古き良きアメリカを彷彿とさせるウイスキーボトル171点を紹介。税込500円。
こちら全部ウイスキーボトルです!
なお、ウイスキーボトル展はすべてお借りしたものだったので、今後当館で見られることはほぼないかと思います…。
やきものの心(わざ)に挑んだ 瀬戸・美濃の美
2021年3月から開催中(※投稿当時)の企画展「やきものの心(わざ)に挑んだ 瀬戸・美濃の美」の関連図録です。
川本桝吉「染付花鳥図花瓶(一対)」
noteや当館のSNSのヘッダーにしています
瀬戸焼と美濃焼は千年を超える歴史を有し、隣接する両地域は互いに交流を続けました。明治時代になると、生産と販売が尾張藩の統制を離れ、それまで瀬戸物として一括されていた瀬戸焼と美濃焼にも独自のアイデンティティが生まれます。
酸化コバルトによる絵付けや鋳込み成型など、西洋からもたらされた技術を積極的に導入しながら美術品へと質を高め、輸出用陶磁器の華を咲かせていきました。
優れた技巧で世界を魅了した、近代の瀬戸焼・美濃焼116点を紹介。銘一覧も掲載しています。税込500円。
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以上、4冊の図録をご紹介しました。
図録に関する他の記事は下記からどうぞ。
■2017~2018年刊行分
■2019年刊行分