Twitterで最もいいねをもらったやきもの ―ざらざらした釉薬・石目焼―
当館のTwitterで過去最も「いいね」をいただいたツイートは、2020年10月8日に石目焼(いしめやき)について投稿したものでした。
普段は2ケタいったらいい方なのですが、このツイートは198いいねをいただきました。
淡い水色と花鳥の取り合わせに、心が和む方もいらっしゃったのかなと思います。
石目焼とは
竹内忠兵衛「石目焼花鳥図花瓶」
明治時代中期~後期
石目焼は名古屋生まれのやきもので、その名の通り表面が石目のようにざらざらとしています。海外ではシャークスキン(サメ肌)とも呼ばれていました。
名古屋の七宝職人・竹内忠兵衛(たけうち・ちゅうべえ)が明治22年(1889)に「陶磁ニ石目ヲ顕ハス法」として、特許を取得した技法です。
銘には、特許を取った日の明治22年5月25日と、そこから15年有効を意味する「特許 二二五二五一五」と記されています。
裏の銘「特許 二二五二五一五 竹内造」
白磁の表面に上絵で淡い水色などの背景色を塗り、花鳥などを描きます。
その上からガラス分を含んだ粉を散布して、約850℃ほどで焼成することで、石目調の凸凹が生まれます。
この風合いにより光の反射が抑えられ、水色などの色合いと相まって、柔らかな雰囲気を持ちます。
この写真だと、よりざらざら具合が分かるかと思います。つやつやしていないのが特徴です。
たまにお客様から触ってみたいとの声を聞きます。触ってみたいですよね…。残念ながらお客様は触れないですが、写真はお好きにお撮りいただけます。
石目焼に描かれたモチーフは、花鳥がほとんど。
花鳥は、日本の絵画の画題の一つとされますが、四季があり、自然が豊かな日本というものが、石目焼には情感豊かに表されているのかもしれません。
描かれた花や鳥がどれも繊細で写実的なのも、絵付けの技術の高さを物語っています。
石目焼の背景は水色の作品が多いと書きましたが、上の花瓶のように水色とピンクのグラデーションであったり、
オレンジ色っぽい壺もあったりなど、色合いはモダンで洒落ているといえるでしょう。
また、花瓶や壺だけでなく、
カップ&ソーサーや、
ティーセット一式も所蔵しています。
取っ手とポットの注ぎ口が竹のような形をしているのが、おしゃれで面白いですね。
花鳥は典型的な石目焼の図柄ですが、鳥の羽や葉脈は金彩で描かれ、アクセントとなっています。
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さて、画像をたくさん入れたのでちょっと長くなってしまいましたが、いかがでしたでしょうか?
反射を抑える石目調の風合いと淡い色の絵付によって、柔らかく独特な雰囲気を放つ石目焼。横山美術館2階の展示室でご覧いただけます。
また、詳細は図録でもお読みいただけます。
参考文献
・髙木典利「作品紹介 石目焼花瓶」『近代陶磁』第11号、近代国際陶磁研究会、2010年
・『明治に生まれた美麗なるやきもの―石目焼―』瀬戸蔵ミュージアム、2017年
・『横山美術館300選』公益財団法人横山美術館、2017年