ソーサーはコーヒーや紅茶を注いで飲むためのものでした
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ソーサーはコーヒーや紅茶を注いで飲むためのものでした

横山美術館では10月3日~2022年1月10日まで、企画展「優美な曲線から歴史が伝わる カップ&ソーサー物語」を開催しております。
※ご来館が難しい方向けに、オンライン展覧会を300円で配信しております。

本展覧会では、明治時代以降に日本で作られて海外へ輸出された、カップ&ソーサーを展示していますが、今回の記事では展示中の作品そのものから少し離れて、カップ&ソーサーの形状やその変遷についてご紹介します。

茶文化の発達

緑茶、ウーロン茶、紅茶など「茶」とつく飲み物は、すべて同じ茶葉からできています。発酵の度合いなどによってお茶の種類の違いが生まれます。例えば発酵しない緑茶に比べて、強く発酵した紅茶には甘みが生じます。

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お茶を飲む文化は中国からはじまりました。お茶には身体を浄化する、眠気覚ましの効果があるとして、仏教の修行僧などから中国全土に広がっていきました。
日本にお茶が伝わってきたのが8世紀頃。鎌倉時代以降、武家社会を中心に茶の湯文化が発達しました。

西洋人がお茶を知ったのは17世紀頃、大航海時代がきっかけです。
日本にやってきたポルトガルやオランダの宣教師たちは、武家の社交儀礼である茶の湯に触れることになります。
この頃、西洋人にとって未知の飲み物であったお茶は、中国人や日本人が長寿を保っている要因として認識するようになります。また、お茶が注がれていた美しい茶器にも注目するようになりました。1610年、オランダが平戸の商館を通じて、茶葉の輸入に成功します。


ソーサーの用途

西洋に伝わった当初、お茶は薬として扱われ、主治医を介して上流階級の人々に飲まれていました。輸入が安定してくると薬としてだけでなく、上流階級のステイタスシンボルとなりました。
お茶が人気になるにつれ、中国からはたくさんの茶碗が輸入されてきます。当時、西洋では磁器を作る技術はなく、その美しさに上流階級の人々は魅せられてしまいます。

さて、輸入された器は中国や日本の茶器であり、取っ手はありませんでした。
また、輸入品の中にはお茶請けに使う共柄の皿があり、これを当時のヨーロッパでは受け皿として使用していたのではないかと考えられています。これが現在のソーサーにあたります。
喫茶風景を描いた絵画には、取っ手のない碗皿でお茶を飲む人物が描かれたものもあります。

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Frans van der Mijn《Portret van Machteld Muilman》 (部分)
1745~47年 アムステルダム美術館蔵

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取っ手のない中国風の茶器が描かれています。

お茶の文化を最初にヨーロッパへ持ち込んだオランダの宮廷は、お茶を受け皿(ソーサー)に移して飲むという、今ではびっくりするようなマナーを広めました。
西洋の人々にとって、取っ手のない茶碗は熱く、持ちにくかったといいます。ソーサーであれば縁と高台こうだいに指をかければ、持ちやすくお茶を飲むのもスムーズになります(あまり想像できないかもしれませんが…)。そのためソーサーは現在のものより深かったそう。
またポットを持たない人々(当時ポットは高級品でした)が、茶碗に直接茶葉を入れ、お湯を注いで茶液を作り、それをソーサに注いで飲んでいたという考えもあります。カップをポット代わりにしていたということです。

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ソーサーに熱いコーヒーを注いでいます
Louis Marin Bonnet 《The Woman Taking Coffee
1774年 メトロポリタン美術館蔵


カップに取っ手が付けられるようになった詳細な経緯は分かっていませんが、1715年頃には取っ手付きのカップやソーサーが、ドイツのマイセン窯で作られるようになりました。
その頃にはすでに、ヨーロッパではビールジョッキなどの取っ手の付いた器が存在しており、こういった事例からカップにも取っ手が付けられたのではないかといわれています。
また、20世紀初頭にはソーサーから飲むのは不作法という認識になり、現在のようにカップからいただくようになりました。ソーサーはカップの収まりがよくなるように、窪みが設けられ、浅くなりました。

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明治時代に作られた作品にも、やや深いソーサーが見受けられます


喫茶店で手にするカップ&ソーサーはこのような変遷を経て、現在目にする形になっています。
ソーサーに砂糖やミルク、スプーンを置いたりする方も多いと思いますが、受け皿だった歴史の名残として今でもカップと一緒に出されています。

当館の展示も、カップ&ソーサーの形状にも注目してご覧いただけますと幸いです。


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